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2013年1月17日 (木)

私のツボ10「ポール・ギャリコのこと」

『ぶたぶた図書館』のネタバレあとがきは最初、図書館──読書のことというか、自分がどんなふうに本を読んできたのかを書いていました。
 その中に入れたのが、『トマシーナ』の作者ポール・ギャリコについて。
 私がもっとも愛する小説家です。
 本のあとがきで言ったとおり、ギャリコからは多大な影響を受けました。
 ──というようなことを書いてから、
「でも、ギャリコを読んでいたのは、高校生の時だったな。その前から小説は書いていたけど、その時は何を読んでいたっけ?」
 と思って続けたら、どんどん横道にそれていく気がして、ボツにしちゃったのでした。
 そのボツになった部分を書きなおして今回コラムにしました。

 私が一番本をたくさん読んでいたのは、中高生の頃だと思います。
 それより小さな頃も読んでいたけれど、自分で本を選べないので家にある活字を片っ端から読んでいたという感じ。それこそ、百科事典、親が買ってくる雑誌、冠婚葬祭入門の類まで。親や周りの大人にあまり本好きな人がいなかったのです。
 その頃、大人から良い本を与えられていたら、また人生違っていたかしら、とも考える。でも、そのかわりマンガばっかり読んでいたので、全然残念には思っていません。
 中学生になって、自分で本を選んだり買ったりできるようになって、小説の読書量が爆発的に増えました。主に、聞いたことのある名作やコバルト文庫等のジュニア小説(今のライトノベルですね)や文庫で買える流行り本を読みまくった。
 その中に、ヘミングウェイの作品がありました。
 当時の私には、ヘミングウェイは「名作」ではなかった。なぜなら、同時期大好きだった大藪春彦さんがエッセイの中ですすめていた「ハードボイルド作品」として読んだから。
 大藪さんが紹介されていたものはだいたい読んだつもりなんだけど、憶えているのはヘミングウェイの諸作品とスタンダールの『赤と黒』だけ。
『赤と黒』は中学生当時、
「うわー、なんかかっこいいー!」
 みたいにしか思わなかったけど、大人になってから読み直したら、
「え、なんか思ってたのと違う……」
 と印象が正反対になっていた。ていうか、多分こっちが正しい。
「かっこいい」と思わなくても(というよりよくわからなくても)思いたかっただけなんだよね……。中二病っぽいよね(´д`;)。そういうのをダークでクールと思う年代でしたよ……。
 でも、ヘミングウェイに関しては多分今でもかっこいい。読み返してないけど(`・ω・´)!
『武器よさらば』の最後の一文にショックを受けて以来、書き方にはいまだに影響受けていると思ってます。
「ハードボイルドはジャンルではなく、文体」
 という信念と、話をつい短く書いてしまうというクセを植えつけられた。orz
 わかりやすく言うと、
「文章はなるべく短く簡潔に感情を交えずに書く」
 というのがその時根付いた、ということです。
 ヘミングウェイの作品は世界の名作という印象が強くて敬遠されている人もいるでしょうけど、かなり読みやすい方だと思います。『武器よさらば』は何度も読んだし、『日はまた昇る』『キリマンジャロの雪』も大好きだった。高校生の時に英語の授業で短編を訳したりしたけど、本当に簡単な英語で驚いたものです。
 今読み直すとどう感じるのか、無性に知りたくなってきた。そういえば、『老人と海』を読んでないや。

 どう書くか、というのが決まって(?)中学を卒業した私。小難しい文章なんか書かなくていい、と思ってよかった(中二病づいてたから、変にひん曲がったら取り返しがつかなかったかも(´д`;))。
 しかし、何を書くか、というのはまだ空っぽな状態のまま。
 そこへ入り込んできたのが、ポール・ギャリコでした。
『ジェニィ』のラストに驚愕した私は、当時たくさん出ていたギャリコの本をこれまた読み漁る。
『スノーグース』『トマシーナ』『七つの人形の恋物語』『小さな奇跡』『マチルダ』『ポセイドン・アドベンチャー』『雪のひとひら』『愛のサーカス』などなど──泣いて笑って、幸せになったり希望のひとかけらをもらえたりした物語たち。
 特におすすめ、というか、私にとって特別な作品は『スノーグース』です。角川文庫の『七つの人形の恋物語』と新潮文庫の『スノーグース』、二つの本に収録されていますが、迷わず両方買うことをおすすめします。『七つの人形の恋物語』も素晴らしい作品だし、新潮文庫には『小さな奇跡』という傑作が入っている。
 今も私は「切ない物語」が大好きなんだけど、そのきっかけになった作品だと思っています。
 ハッピーエンドとアンハッピーエンドしか知らなかった高校生の私に、それだけでは割り切れない、でもとても美しいラストがある、と教えてくれたのがギャリコだった。
 彼の作品を読むといつも、いいもの悪いもの、きれいなもの汚いもの、明るいもの暗いもの──どちらか一方だけでは成立しない「物語」という「世界」の可能性に魅せられました。
 それから、ファンタジーの多様性というものも開眼させてくれた。『ジェニィ』で猫になってしまった少年に対して先輩猫ジェニィが懇切丁寧に教える猫のしきたりの描き方に、私は絶対に影響を受けている。これまた読み直してないからわからないけど(´∀`;)!
 とはいえ、そこから小説家になるまでが──いや、書きたいものがある程度書けるようになるまでが長い。
 というか、まだまだと思っておいた方がよさそうです。

 日本の作家には影響受けてないのか、と突っ込まれそうですが、日本人は圧倒的にマンガ家でね……。
 少女マンガは偉大だよね。

  

 

  

 

 うう、ギャリコ品切れ多いなー(´Д`;)。『愛のサーカス』なんて一度も文庫になってないのかも。すごくいいのに! 復刊希望!

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コメント

「ぶたぶた図書館」の感想ものすごく遅くなりました。
本をめぐるエピソードが楽しかったです。もちろん美味しい料理も。
ギャリコは私も好きですね。それほど読んでいませんが。
意外なのは大藪春彦。私もファンで結構読んでいますが、矢崎さんとは接点ない感じが。やはり映画ですかね?

投稿: きさ | 2013年1月18日 (金) 05時23分

こんばんは、矢崎さん。

せっかくここで勧めてくださったので、とりあえずギャリコの「雪のひとひら」を読んでみました。

「雪のひとひら」は信仰心に厚く、時には造り主に疑問を持ちつつも感謝の心を忘れない、平凡かもしれませんが、理想的な女性ですね。

私には、真似できないと思いました。

図書館には品切れ本もあるので、少しずつ読んでいきたいと考えています。

投稿: こっぱもち | 2013年1月28日 (月) 19時48分

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