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2011年12月18日 (日)

『ぶたぶたは見た』ネタバレあとがきその1

『ぶたぶたは見た』のネタバレあとがき、その1です。
 元ネタの実体験について。
 コメントもネタバレOKですので、未読の方はご注意ください。

 この作品は、私の実体験が元になっています。
 と、巻末のあとがきにも書きましたが、どこら辺かというと、図書館のシーンです。
 正確に言うと、私は脇で見ていた(聞いていた)人間ですので、実体験とはちょっと違うのかしら?(´д`;)

 ある日のこと、私は近所の図書館へ行きました。廉とぶたぶたが図書館に行った時と同じく午前中の早い時間で、人はほとんどおらず、カウンターには女性の職員が一人だけ。住宅街の小さな図書館なので、平日の午前中はいつもこんな感じです。
 私は本棚の陰にいたのですが、そのうちカウンターの方から話し声が聞こえてきました。
 それがまさしく、照喜が苑子にしたみたいな質問だったのです。
「えー、このおじいさん(声の感じで判断)、何でこんなこと質問してるの!?」
 私、ドン引き。生で聞くと、なかなかえげつないです(´ω`;)。
 あまりにもしつこいし、職員さんも困っているような声だったので、

「すみません、『◯◯』って本はこの図書館にありますか!?」

 と検索を頼むために割って入ると、おじいさんはすーっといなくなってしまいました。(ちなみに本は以前検索してもらって、ないとわかっているもの)
 その男性がどういう人だかもわかりませんし、職員さんは本当は困っていなかったのかもしれないのですが、「何なんだろうか」という疑問が私には残る。
 そのあと、奥の方の椅子に座って本を読んでいたら、今度は女の子がおじさんに質問をし始めました。
 最初は孫を連れてきているのかな? と思っていたのですが、よく聞くと(というか、丸聞こえ)たまたまこの図書館で居合わせただけらしい。
 おじさんは困りながらも律儀に答えていました。この会話は、ぶたぶたと女の子の会話にだいぶ流用したのですが、生の会話はもっとおかしかった。

「おじさんちには子供いる?」
「いるよ」
「子供は何人?」
「二人。息子と娘」
「ふーん。息子って男?」

 私の頭の中には、このセリフが(^^;)。

Yotsuba

「子供っていくつ?」
 子供とはいえ、彼の年齢からすれば、もういいお歳のお子さんたちなわけです。息子の年齢を聞いた彼女は、
「それ、子供じゃなくて、おじさんじゃん!」
「おじさんだけど、子供なんだよ」
「じゃあ、お母さんもいる?」
「いるよ」
「おじさんもお母さんの子供?」
 どっちのおじさんのことを指してるんだ、と突っ込みたくなりますが、この場合の「おじさん」は今話している人のことらしい。

 ──と、万事こういった具合で、とにかく家族のことを訊きまくる。いったい彼女の中にはどんな家庭が構成されているんだろうか、と楽しくも恐ろしい想像がふくらみます(^^;)。
 そして、本の中の女の子のように、「あっ、学校行かなくちゃ! じゃあね、バイバーイ!」と突然帰ってしまう。
 駈け出していくその子のいでたちは、体操服に黄色い帽子かぶって、なぜか画板を持っていました。小学生だったんか、と思いましたけどね。
 その時、
「おんなじようなこと訊いてても、小さい女の子がおじさんに言ってると印象が正反対だ。面白いなあ」
 と思ったのです。
 後日、この一連を友人に話したら、この本に書いたように独身の子供を心配して、親がよさそうな人を見つけて回る、ということがあるらしい、というのを話してくれました。彼女も声をかけられたことがあるそうです。(Oさん、いつもいつもありがとうございます!)
 結婚相談所に親が登録する、という話は前から聞いていたのですが、ナンパまでするという人は、相当思いつめているのでは、と考えてしまった。

 でも、この話は最初ぶたぶたで使うつもりはなく、別の小説、あるいは『物語のルミナリエ』のショートショートにしようかと思っていたのでした。
 ぶたぶたを家政夫にする、というアイデア自体は、前々からあったのですが、当初の予定では『家族八景』みたいな短篇集ということだったのです。
 けど、こねくり回してもなかなかうまくいかず。「どうしようかな~」と悩んでいた時、某所で、
「ぶたぶたの長編が読みたい!」
 という声を伝聞で聞き──そしたら、「家政夫」とこのネタがガーッと混ざって、物語ができあがったのでした。
 会話を聞いたのが学校の夏休み寸前って時期だったから、その時にまとまってくれてたら、もっと楽だったんだけどね……(TωT)。

 

 

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コメント

こんばんは、矢崎さん。

本当に、そんなおじいさんがおられたのですね。
それは、不気味ですね。

ところで、「家族八景」読んだのがずいぶん昔なので、内容を忘れてしまっています。
手放しているので、もう一度買うか図書館で借りるかですね。

投稿: こっぱもち | 2011年12月18日 (日) 20時28分

>こっぱもちさん
 はい、本当にいたのです。
 私自身が訊かれていたら、本当に困ったというか、やっぱり怖いと思ったのではないかと。明るいとはいえ、他に人影は見えなかったはずですし。

 私も『家族八景』の細かいところは忘れてしまっています(^^;)。友人によれば、「後味の悪い話が多い」。けど、筒井さんの後味の悪さだったら格別なはずなので、それはそれで読みたいと思ってしまいますね。

投稿: 矢崎存美 | 2011年12月20日 (火) 08時01分

矢崎先生、こんにちは。あのエピソードは実話だったのですね。読んでてもドン引きだったのに実話だったなんてすごく驚きました。

今度どら焼き買いに行ってみようと思います。食べてみたかったんですよ~。ありがとうございます!

投稿: ちこ | 2011年12月20日 (火) 13時59分

>ちこさん
 謎の多い実話ですけど、何にしろ当事者はもっとドン引きですよね(^^;)。
 どら焼きは早めに買いに行かれることおすすめします。朝九時からやってますよ。

投稿: 矢崎存美 | 2011年12月22日 (木) 15時50分

 いつも楽しく読ませていただいております。

 ワタクシ、その図書館のエピソード実体験済みです。
以前公共図書館に勤務していた際に利用者の方(年配の男性)からやたらとプライベート事項を尋ねられ、同時に駅前などでさりげなく?待たれていたり、旅行先のおみやげを(無理やり)いただいたことがあります。息子さんのお話もいろいろ聞かされました。
 幸か不幸か間もなく私は勤務先が変わり、その方も引っ越されたようで終わりは来ましたが。正直ドン引きでしたが、利用者ゆえ問題になってはならないと頭を痛めたものです(同僚がそういう態度を取った方によそよそしくしたら、挨拶が悪いと怒鳴り込まれたことがあるため)読んでいてうわあと思いました。

 黒松も祖父が好物で買いに行かされました。お店の場所がなかなかわからず困った思い出が。ですが味はとびきりでした。

 いろいろ思い出すこともあり、今回の新作はいつも以上に面白かったです。

投稿: あこ | 2012年1月13日 (金) 23時56分

>あこさん
 ひょええ〜っ、それは怖かったですねー(´д`;)。
 私が聞いていた時、職員の方が何とか話を穏便に切り上げたい、という気持ちが端々ににじんでいるように思えたので口を出してみたのですが、正しかったかしら……。
 何にも発展しなくて何よりです……。
 あ、お読みいただき、ありがとうございます! 不快にお感じにならなくてよかった!

投稿: 矢崎存美 | 2012年1月15日 (日) 08時58分

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