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2008年1月31日 (木)

私のツボ3『影踏み』

 今回は、横山秀夫さんの『影踏み』です。

影踏み

 横山秀夫さんといえば、『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『影の季節』等々、代表作がたくさんあります。文庫になっているものはほとんど読んでる。その中で、この作品が私は一番好きですが、彼の作品の中では異色であると思います。だって、ファンタジーなんだもん。
“ファンタジー”って言ってしまうと、ずいぶん印象が違ってしまいますが、こういうのってどう説明すると一番しっくり来るんだろうね。『ぶたぶた』も“ファンタジー”なんだけど、こういうとそれだけで片づけられてしまって、その言葉になじみのない人たちはそれっきりになってしまうのですよ。
 現代社会を舞台にした不思議な話──なんだけど、それでもやっぱりレッテルが貼られてしまう気がします。決して“不思議”を売りにしているわけではないからです。“不思議”は、真のテーマを現す鏡のようなもので、本当は不思議でも何でもないどこにでもいる“人間”を現そうとしている、と思うから。
『影踏み』の“不思議”なところは、主人公・真壁修一の頭の中に十数年前17歳で死んだ双子の弟・啓二の魂が住んでいる、ということです。二人は、普通に会話をし、啓二の並はずれた記憶力を利用して、事件を解決に導いたりします(お話自体はまっとうなミステリ)。この設定だけだったら、ライトノベルにもよくありそうな不思議探偵の類ですが、ここに二人がかつて取り合った幼なじみの女性・久子が絡んでくるとややこしくなる。いや、別に関係性としてはややこしくありません。だって啓二は死んでいるし、久子は修一を選んでいるから。でも、自分の頭の中に少年のままの弟が住み着いていること、そして犯罪の前科があることから、堅気の久子と距離を置かざるを得ない。
 と、何だか真面目に書いてしまいましたが、真壁兄弟の会話を読んでたら頭に浮かんできたのは、
「ハガレン……?」
『鋼の錬金術師』のエドとアルみたいな感じ。いやまあ、それだけでなく、宿命から逃れられない兄弟と幼なじみ、という図式も、私のツボかなあ、と思ったですよ。じゃあハガレンはツボなのか、と言えば、そうでもない(単純に面白い作品として愛読してます)。あの作品はあくまでもエルリック兄弟の物語であって、ウィンリィはまだ二人の(あるいはどちらかの)最大の弱点ではないからです。なりそうだけど、できたらそれはずいぶん先であってほしい、と私個人としては思うなあ。
 ちょっと脱線しましたけど、こういう図式の場合のツボポイントは、男たちが女性に対して及び腰になる、というところなのです。つまり、ヘタレになっちゃう、ということですね。啓二はもちろん何もできませんが、修一は久子に会うことも叶う。けど、やっぱり何もできない。啓二が彼の気持ちをさかんに代弁しますが、一切肯定しない。
 いい歳をした男が、頭の中の17歳の男の子から好きな女のことで説教されて何も答えられないなんて、こんなヘタレってないよな──どうもそこが私の一番のツボらしい。
『影踏み』の帯には「かつてこれほど切ない犯罪小説があっただろうか。」とありますが、してきたことへの後悔、罪悪感などから、どうしようもなくヘタレまくる修一がほんとに切ない。
 そうです、私はヘタレ好き。自分で書いても男はヘタレになってしまう、と自覚しています。でも、ヘタレな人は書いても読んでも、多分本物の人間であっても、面白い。本人はいろいろ苦労が多そうですけどね。

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コメント

またまた来てしまいました!(*^_^*)お返事ありがとうございます!!!
ブログってすごいな~。自分が読んだ本を書いた人と話ができるなんて!(;ω;`)嬉しいです~(p_q)!!それともこんなとこで感想を書いてる私はKYなのか…笑


ついさっき「明日をもう少し」読み終わりました! 最後の終わり方ドキドキしました~(´pq`)+゚ 何か全てが不思議で、でもほんわかしてて、説明下手なんで何て言ったらいいか分からないけど、凄く好きです!続編は出るんでしょうか?…(・∀・)ドキドキ

大学の課題図書になってる事、作者さん本人は知らないんですね~(。Δ゚)! 誰がそうしたのかは分からないですけど…。でもこの本と出逢わせてくれたので良かったです!!受験がんばります!ありがとうございます(^O^)

長くなってすいません。。ではまた!

投稿: 小 | 2008年2月 3日 (日) 03時30分

 こんにちは、小さん。
『明日をほんの少し』お読みいただき、ありがとうございます〜。感想はここのコメントでも掲示板でも、どちらに書いていただいてもかまいませんよ。メールもいただくんですけど、たまにスパムメールに紛れて消えてしまったりして……orz どなたに読んでいただいてもかまわないメッセージなら、ブログのコメント欄が一番早くお返事差し上げられるかも。
『明日をほんの少し』の続編というか、『神様が用意してくれた場所』シリーズはまだ続きます。今書いてます。出るのは春以降ですかねえ……。よろしければ、また手にとってみてくださいね〜。

投稿: 矢崎存美 | 2008年2月 3日 (日) 16時35分

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